第31章 チェンジ!
「……え」
その淡々とした声に、一ノ瀬は顔をあげて自分達の主将の姿を仰ぎ見た。
「本当に辛い時は、アイツはちゃんとオレに言ってくれる。だから」
そう言ってチラリと彼女の方に向けられた瞳の強さに、一ノ瀬は自分の浅はかさを悟って深く項垂れた。
ヒシヒシと胸を打つのは、わずかに痛みを伴った、ふたりの確かな絆。
「す、いませんでした。俺……」
「いや。でも、そうだよな……もっと気をつけるよ。彼女はオレの大切な女性だけど、それはお前達にとっても同じだもんな」
──敵わない、このヒトには
軽薄に見られがちな容姿に隠れた、揺るぎない自信と包容力の深さにただただ圧倒される。
ずっと胸にくすぶっていた何かが、一瞬で尊敬の念に変わる確信。
一ノ瀬は姿勢を正すと、深く頭を下げた。
「ホント……すいません。生意気なコト言って」
「いや。嬉しかったよ、お前の気持ち」
「センパイ……」
「そーいえばオレが一年の頃、『生意気だ!』って当時のキャプテンにいっつもシバかれててさ」
懐かしいよな~と明るく笑い飛ばすキャプテンの声に、周囲の視線も自然と離れていく。
「そう……なんですか?あ、でもなんかソレ、分かる気がします」
コラ、調子のんなってと背中を叩く手は、大きくて頼もしかった。