• テキストサイズ

【黒バス】今夜もアイシテル

第30章 トリガー



日曜の昼下がり。

複数の黄色い悲鳴が、お洒落な店内に響きわたった。

「ちょっ、アレ見て!」
「嘘!?超カッコイイんだけどー!」
「あ、ワタシ知ってる!アレってモデルの……」

窓際に座っていた青峰はつまらなそうにソッポを向き、桃井は誰が来たのかを瞬時に察して入口に目を向けた。

「結ちゃーん!こっちこっち」

「桃井さん!」





ふたりがよく待ち合わせに使う場所は、海常と桐皇のほぼ中間に位置するこじんまりとした喫茶店。

四人掛けの席に座る青峰と桃井のもとに、結は笑顔で駆け寄った。

「お待たせしました。青峰さんも一緒だったんですね。お久しぶりです」

「よう、相変わらずちいせぇな」

「ム。挨拶くらい普通に出来ないんですか?」

「へーへー、元気だったか?」

頭をぽんと撫でられて笑顔を見せる結の後ろから、溜め息とともに現れたのは、全国区の人気モデル黄瀬涼太。

「も〜なんで青峰っちがいるんスか」

「チッ。やっぱお前も一緒かよ」

「あ!いま舌打ちしたっしょ?もしかして青峰っち……」

顔を合わせてものの数秒。

会うなり喧嘩をはじめるのは、このふたりのお約束。

呆れた顔で桃井の隣に座ろうとした結は、「こっち来いよ」と浅黒い手に腕を強く引かれてバランスを崩した。

「わっ」

だが、青峰の胸に倒れこむ寸前、その身体は黄瀬の腕につつまれていた。

「いくら青峰っちでも、これ以上オレの結に触るの禁止、ね」

ニッコリと微笑むと、黄瀬は自分の胸に抱きこんだ恋人の額に唇を落とした。

「ちょっ、黄瀬さん!」という非難の声は、こっそり覗いていたらしい女子の悲鳴にかき消されてしまった。

「うわぁ〜、結ちゃん愛されてる」

「も、もも桃井さんっ!恥ずかしいこと言わないで……じゃなくて、黄瀬さん!離してください!」

「ハッ、独占欲丸出しかよ。そのうち嫌われんぞ」

「ナニ言われても平気っスよ。ちなみに、結はオレに夢中……ぐえっ!」

腕の中の当人にネクタイを強く締められるという逆襲に会い、黄瀬は呆気なく降参の手をあげた。

「……黄瀬。なかなか大変みたいだな」

「ハハ、まぁ……ね」

首に食い込んだネクタイを緩めながら、黄瀬は曖昧に微笑んだ。





/ 521ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp