第26章 エンディング
あきらかにサイズの合わない、黄瀬の大きなユニフォーム。
『ワタシ、○○キロの減量に成功しました!』とダイエット前に着ていた服をアピールする怪しい広告のようだ。
「ちょっと向こうむいててくれませんか?」
「ん〜?いいっスよ」
ようやく聞き入れられた願いに、ホッと胸を撫で下ろす。
いつの間に着たのだろう、背中を向けたジャージはいつ見ても誇らしい海の青。
たくましさを隠しきれない両肩が、かすかに震えていることは今はスルーせざるを得ない。
「絶対に見たら駄目ですよ」
魔女の媚薬で人間の足を手に入れた人魚姫のように、結はそろそろと足を床に下ろした。
物語と違って痛いのはつま先ではなく、バクバクと波打つ心臓と、ダボダボのユニフォームを着た自分の姿。
(これは痛すぎる……早く着替えないと)
抜き足でクローゼットに近づく背後から、気配を消して忍び寄る影に振り向く暇もなく、ふたつの腕に拘束されて、結はすくみ上がった。
「ちょ、何ですか!?」
「見ないでと言われると余計に見たくなる心理、昔話に出てくんの納得っスわ。てか結、エロすぎ……」
鶴の恩返しじゃあるまいしと突っ込む前に、身じろぎひとつ出来ないまま、薄い生地の上から胸の膨らみを探る手が妖しく這いまわる。
「や、駄目ですって!黄瀬さん!」
「ごめん、無理。こんなエロい姿見せられたら、オレもう訳がわかんないっス……」
「訳が分からないのはこっち……ん、駄目……」
「ノーブラの破壊力もハンパねぇスわ。脇も胸もこんなに開いて……ガード甘すぎ」
「あっ」
素肌をすべる手のひらは、熱のある身体と同じくらい熱く、その柔らかさを味わうように吸いついて離れない。
「アレ?もうこんな硬くして……もしかして」
左手の指に胸の飾りを摘まれながら、短いワンピースと化したユニフォームの裾から潜りこむ右手に、結は膝を揺らした。
「ひゃ……ん!」
「期待してたんスか?こんなに濡らして……結、やらし」
「ゃあぁ、っ……ん、ふぅ」
「彼シャツならぬ、彼ユニフォーム……癖になりそ」
耳に侵入する舌に音を立てて愛撫されて、結は浜に打ち上げられた魚のようにぴくぴくと身体を震わせた。