第23章 ガーディアン
母親譲りの、何事にもオープンな性格の持ち主である黄瀬が、人前……特に女子がいる場所で必要以上に結に接触しないよう自重しているのは、勿論意図してのことだっだ。
それは、決して間違いではなかったし、ある程度の抑止力にはなっていた。
だが、モデルということを差し引いても、黄瀬涼太という人間は、彼自身が考える以上に周囲を魅了してしまう唯一無二の存在でもあった。
そして、女子の羨望や嫉妬が時に凶器になる危険性は、黄瀬だけではなく、結の頭の片隅にも常に存在していた。
だから、あの時──
『すいません、ちょっとコレ置いてきますね。すぐ戻りますから待っててください』
どこか様子がおかしい女子生徒から離れた隙に、結は笠松に電話をかけて予防線を張っておいたのだ。
本当は、あんな素直そうな女の子を疑いたくはなかった。
だが、何かあってからでは遅いのだ。
簡単な事情を説明した結に対して、笠松は『俺が行くまで待ってろ……と言っても聞かねーんだろ?』と呆れた声で笑った。
『だって、もし本当だったら、早く行ってあげないと……』
電話口から漏れ聞こえるかすかな溜め息。
『今、職員室を出たとこだ。いずれにしろ、一人じゃ困んだろ?場所が分かったら連絡くれ、すぐにそっち行くから……そうだな、とりあえずそのまま通話状態にしておけるか?』
『分かりました。すいません……お願いします』
笠松ならきっと間違えない。
通話中のままの携帯をポケットにしのばせると、結は足を大きく前に踏み出した。