第23章 ガーディアン
その頃、体育館を出た笠松は混乱していた。
「くそっ!よく聞こえねー!待てよ……体育館から一番、離れた校舎って……森山、分かるか!?」
「一番遠いってことは……多分こっちだ!何もないといいが、とりあえず急ごう!」
海常で鍛えた脚力は伊達ではない。
今も大学で、コートを駆け回っていればなおのこと。
広い敷地内を駆け抜ける二人が、結がいる校舎に到着するまではものの数分だった。
「水原っ!何処だ!?」
「……っ、ここです!笠松さん!」
「な、なんだよ。このデカい奴ら」
「チッ」
突然現れた二人の貫禄ある姿に、明らかに男達に動揺が走る。
「てめぇら、ココで何してやがる……あぁ!?」
薄暗い校舎の裏で、男の手に光るナイフを目にした笠松の全身から、怒りのオーラが噴き出した。
「何してるかって聞いてんだよっ!!」
笠松の鬼気迫る姿に圧されて、「ヒィ」と一人はあっけなく逃走を図り、同じく逃げ出そうとした片割れは、森山に首根っこを捕まれてジタバタと無駄な抵抗を繰り返した。
「……来て、くれたんですね」
「っ、水原!?」
その場に崩れ落ちそうになる身体を、笠松は間一髪のところで受け止めた。
「オイ!怪我はないか!?」
めずらしく動揺した様子をみせる笠松の腕の中、結は力なく笑って頷いてみせた。
「大丈夫……です。すいません」
「無理してんじゃねーよ。だが、よく俺に……」
と、その時。
逃げ出した男とすれ違うようにして、こちらに向かって全速力で走ってくる人影が結の目の端に映りこんだ。
ぶるぶると身体が震えだす。
「水原、どうした?」
「駄、目。来ちゃ……」
その願いもむなしく、笠松達を追いかけてきたらしい黄瀬の姿が、はっきりとした輪郭を描き出していく。
「ハッ、笠松センパイッ!どうしたんス、か……え?……結?」
息を切らせた彼の目に飛び込んできたのは、笠松に支えられている結の姿と、男を捻りあげている森山の姿。
その近くにペタリと座りこんでいる女子に、黄瀬は見覚えがあった。
「なんスか、これ……」
そう口では言いながらも、何があったかは察してあまりある状況だ。
ギラリと色を変える双眸に、周辺の空気が一瞬で凍りついた。