第22章 ギフト
出会いが一年遅ければ、今頃どうなっていただろう。
いや、もしかしたら出会うことすらなかったのかもしれない。
渇いた喉がゴクリと鳴る。
「結はオレの、だよね?」
「え……いきなり何、を」
腕の中の身体を壁にジリジリと追いつめる金の瞳が、暗闇の中で妖しい光を放つ。
それは紛れもなく、獲物に標的を定めたケモノの瞳。
「ま、待って……」
「確かめさせてよ。この唇がオレのもんだって」
「ん、あっ」
強引に奪ったやわらかな唇に、軽い目眩。
不意打ちのキスに硬直する結をなだめるように、黄瀬は重なるだけのくちづけを繰り返した。
「やっ、ダ、メ……ん」
「なんで?オレの、キスは……嫌い?」
腰に回した腕で軽い身体を引き上げて、より深く唇を絡ませる。
「ふぁ、っ」
口内に潜りこませた熱い舌で、敏感な上顎をくすぐり、奥に逃げこもうとする舌を絡めとる。
熱を帯びてヒートアップするくちづけ。
「……結」
「ん、っ」
トサリという音とともに、小さな手から滑り落ちたカバンの中に、ちらりと覗く金のリボンは、おそらく今日彼が唯一欲していたもの。
(でも、今はキスが欲しい。もっと)
縋りついて息を乱す恋人に、降り注ぐキスの雨はやむ気配はなく。
「全部オレの、だから……」
「は、っ……黄瀬さ、ん」
「分かってる……よね、この唇にキスするのはオレだけだって。もし、他のヤツに指一本でも触れさせたら」
背中の毛が総毛立つような低い声。
「……りょ」
「好きすぎて、頭ヘンになりそっスわ」
「……ッ、あ」
嫉妬にかられた唇が、やわらかい耳朶に歯をたてる。
「もっとオレのもんだって印、刻むから……ちょっと我慢して」
「ひゃ、あ、ぁっ」
耳に
首筋に
明らかに見える場所を選んでキツく吸いあげてくる唇に、結は耐えきれずに歓喜の声を上げた。
「ンっ、涼……太、ぁ」
「誰にも……誰にも渡さない。オレの」
「……ん」
「髪、甘い香りがする。これってオレのため、だよね?」
黄瀬の執拗なまでの愛撫に身をまかせながら、結は朝からチョコレートまみれになっていた自分をぼんやりと思い浮かべていた。