第22章 ギフト
あどけなさを残して入部してきた新一年生達も、月日を経て、海常バスケ部員として頼もしく成長した。
『新入部員に、余計なこと言わないでくださいね』
『オレと結がラブラブってことは、余計なことじゃないから言っていいんスよね?』
『…………』
『スンマセン』
無言の圧力に屈した黄瀬だったが、彼の結を見る目や態度は、他の女子に対するものとは明らかに違っていた。
そして、犬のようにじゃれる黄瀬を邪険に扱いながらも、どこか親密さをにじませる結の態度に、彼らはふたりの関係を自然と受け入れていった。
『彼女は水原結さん。海常の卒業生で、うちのマネージャー的存在だ』
『え、卒業生……ってことは』
『マジで?』
監督から紹介された彼女の幼い第一印象に、当初は驚いていた一年生達も、助言者として、そして頼りになる年長者として一目置くようになるのに、それほど時間はかからなかった。
『黄瀬センパイなら、もっと……』
そんな声もいつの間にか消えていた。
『水原さん!すいません、ちょっといいですか?』
『テーピングがうまく出来ないですけど、教えてもらえませんか?』
単なるマネージャー的な存在ではなく、一人の女性として意識している者がいる可能性は決してゼロではないだろう。
(ま、オレもそんな感じだったからな……)
キセキの世代の一人であり、今や海常の新しい主将として全国にその名を轟かせている黄瀬涼太。
その彼女に手を出そうとする強者がそうそういるとは思えないが、誰にでも平等に、そして懸命に尽くす健気な恋人の姿に、彼はかすかな苛立ちを覚え始めていた。
来るものは拒まず、去る者は追わず
今まで、そんなクールな関係しか知らなかった彼が、このもやもやした感情も嫉妬の一種だと自覚したのはごく最近のこと。
明確なライバルに対してならともかく、なぜか彼女に話しかける者すべてが厭わしくて仕方ない。
(オレ、あんま執着とかしないタイプだと思ってたんだけどな。意外と……)
「黄瀬さん、どうしたんですか?」
急に黙り込んでしまった黄瀬を気遣うように、腕の中から見上げてくる澄んだ瞳が、胸をチリチリと焦がす。
「だから、その目……」