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【黒バス】今夜もアイシテル

第22章 ギフト



「っ、黄瀬さん!皆が見て……」

「いいんだって。結がオレの彼女だって、ここの連中はちゃんと知ってるし」

「そ、そういう問題じゃありません!」

ふたりの背後から聞こえるモップをかける音やボールを片付ける音以外にも、チラチラと様子を窺う視線は、単なる好奇心だけではないことは明らかだ。

大きな背中で周囲からの視線を完全に遮断するように、黄瀬は一歩その距離をつめた。

「で、ホントに今日はどーしたんスか?」

「あ、えっと……武内監督に用事があったのを思い出して、ちょっと寄ってみたんです」

「監督?監督なら練習終わって一足先にあがったんスよ。多分まだ職員室いると思うけど、一緒に行こっか?渡す資料あるんなら預かっとくけど」

「いえ、急ぎじゃないので……あの、大丈夫です。だから、腕を離して……」

目を合わせようとせず、いつも以上にテンパっている恋人の腕を掴んだ手に力を込めたその時。

「黄瀬センパイ!コレどうしたらいいですか!?」と指示を仰ぐ声に、タイミング悪すぎだろと心の中で盛大に愚痴る。

「ほ、ほら。向こうで呼んでますよ」

「あ〜も〜、仕方ないなぁ。じゃ、この話は後で聞くっスわ。なんかワケありみたいだし」

「っ」

相変わらず嘘が下手な彼女の困った顔は、何度見ても厭きないから不思議だ。

「片付け終わるまで、結は大人しくココで待ってること。分かった?」

「……ハイ」

コクリと頷く彼女の頬がわずかに赤く染まっているのは、寒さのせいだけではないはずだ。

「じゃ、後で」と掴んだ腕をゆっくり解くと、ホッとしたように息を吐く彼女の額に、掠めるようなキスをひとつ。

「き、黄瀬さん!」

「ハハ、ごめん。そんな顔するからつい」

「は、早く行ってくださいっ!」

身体を押してくる小さな手に「ハイハイ、分かったっスよ」と気のない返事をしながら、ノロノロとその場を離れる。

(こうやって、彼女が誰のモノか威嚇しとかないとな)

「水原さん。ここ、寒くないですか?上着貸しましょうか?」

「お気遣い有難うございます。でも、五倍は訂正しませんよ」

「ちぇっ、やっぱ駄目か~」

結に声をかける後輩をチラリと横目で見ながら、黄瀬はキャプテンとしての仕事に戻っていった。





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