第20章 ディフェンス
キシリと軋む音は、このベッドに組み敷かれた時に生じる、耳に馴染みはじめた効果音。
「あ」
あっという間というのは、まさに今の状況を指すのだろう。
あっさりとベッドに引きずりこまれて、結は目の前にせまる端整な顔に一瞬息を止めた。
鼻先が触れそうな至近距離に、ふいと横を向く瞬間を待っていたように首を撫でる熱い呼吸。
「き、黄瀬さ……」
「風邪うつしちゃうと駄目だから、キスは我慢……っと」
「ん」
シャラとかすかな音がして、少しかさついた唇が鎖に触れた気配に肩を竦める。
「あ、何して……ンっ」
「これ外してもい?今度、オレにプレゼントさせてよ。結が身につけるものは全部オレが……」
鎖から離れた唇が、気まぐれのようにパクリと耳朶を食む。
「んっ、ぁ」
「相変わらず弱いっスね、耳。てか、感度あがった?ちょっと弄っただけなのに、もうこんな熱い……」
いつもより体温の高い身体に包まれて、伝染する熱が全身を駆け巡る。
「ふ、ぅっ……ん」
首筋を滑る熱い舌に、簡単に乱れはじめる呼吸が、金の髪をサラリと揺らす。
一気に温度をあげる布団の中、押しつけられた下半身に感じる昂りに、結は精一杯の抵抗を試みた。
「や、駄目……っ、あ」
「……その声、逆効果だってば」
「ン、ふ」
わずかな襟の隙間に忍び込んでくる唇に鎖骨をなぞられて、結は手の甲で口を塞いだ。
「ん、んっ、ぁ」
「これって……前に着けてたオレのピアス?」
愛撫の波にのまれかけていた結は、嬉々とした声にパチと目を見開いた。
「っ」
胸元に落とした視線は、チェーンに通していたピアスを噛んで、ニヤリと笑う上目遣いの瞳に絡めとられた。