第17章 ハングリー?
「ひ、ゃっん」
ズルリと抜かれた指に思わず出た淫らな声に、結は自分の甲を口に押し当てた。
「声、抑えないで……好きなんスよ、結のその声」
「だ、だって……」
いつの間に手にしたのか。
ゴムの袋を歯で噛みきる妖艶な仕草に、身体の奥から蜜がじわりと滲み出していく。
「いつも……持って、る……の?」
んな意地悪なコト言わないの、と額にチュッと音を鳴らすキス。
「オトコの責任……てか、結が大切だから」
黄瀬はわずかに苦笑しつつ、手早く装着を済ませると、完全に脱力した足をゆっくりと押し拡げた。
「りょ……、ンっ」
「ごめん……結、こんなトコで。でも、ハッ、もうオレ我慢の限界。欲しくて、欲しくてたまんない……入らせて」
「ん、あっ、ああ……」
まだ、どこかに罪悪感があるのだろう。
挿入を拒もうとするかのような収縮に逆らわず、黄瀬は潤む瞳にそっとくちづけた。
「息、吐いて」
苦しげな声に鼓膜を揺らされて、結はジワジワと身体を拓こうとする灼熱の塊を、無意識に締め上げた。
「う、はぁ、涼……太ぁ」
「くっ」
彼の頬を伝ってポタリと落ちてくる汗は、不快どころか快感でしかなく。
必死に衝動と戦っているのか、眉をぎゅっと顰めた綺麗な顔を、結は滲む視界の中でぼんやりと見つめた。
(どうしてこんな人が……)
ふいによみがえる“リョータ”と呼ぶ女の子の声が、胸をチクリと刺す。
「結、ココに皺よってる。やっぱ無理っぽい?」
眉間にそっと触れてくる、指先のかすかな震えがこんなにも愛しい。
そうだと言ったら、きっと彼は行為をやめてくれるのだろう。
こんなにも滾る熱を理性で抑えるのは容易ではないはずなのに、気遣ってくれる優しい声に、気持ちがとめどなく溢れていく。
「う……ぅん、無理なんかじゃない。私も欲しい……涼太、が」
会うほどにどうしようもなく惹かれていく
底が見えないほどに深まる彼への恋心
「私を……涼太でいっぱいにして。他の女の子に、笑いかけないで……」
「……結」
月明かりに照らされた切れ長の瞳が、驚きと歓喜の色をたたえて大きく見開かれた。