• テキストサイズ

【黒バス】今夜もアイシテル

第14章 バースデイ







『オレには今、大切なヒトがいるから受け取れないんスよ。本当にごめんね』

事務所に一方的に送られてくるのは仕方ないとしても、目の前に差し出されるカタチある物や気持ちを、何ひとつ受け取ることは出来なかった。

大声で泣き出してしまったり、悪態をついて去っていったり。

通学の電車の中に始まり、部活中の体育館まで……何度そんなやりとりを繰り返しただろう。

『黄瀬、いつも以上に大変そうだな』

『中村センパイ。すんません、練習の邪魔しちゃって……』

『お前が悪いわけじゃないから謝んなって。それに皆、お前の気持ちは分かってるしな。もう今日はそろそろ上がったらどうだ?早川もそう言ってたし……』

お前なら解読出来ただろ?と、眼鏡越しに柔らかく微笑む瞳に胸の奥が熱くなる。

『……有難うございます』

頼もしい先輩に心の底から感謝して、黄瀬は深く頭を下げた。





彼女達には申し訳ないと思う。

だが、本当に欲しいモノはもう手に入れた。

腕の中の小さな存在は、どんな高価な贈り物にも敵わない。





「結が着けて」

「え?」

首を傾けながら器用にピアスを外し、耳を差し出すように近付く端整な顔。

「でも、着けたことないから」

「大丈夫っスよ。ほら、ココ……」

柔らかい耳朶に触れて、ドキドキと高鳴る胸の鼓動。

彼の指先に導かれながら、結はぎこちない手つきでなんとか装着を終えた。

「痛くなかったですか?」

「ウン。ど?似合うっスか?」

お披露目するように、髪を耳にかける仕草が悔しいほど色っぽい。

「に、似合うっス」

「ぷっ。結って時々オレの語尾が移るよね。ホント可愛すぎ……」

ぎゅっと抱きしめられた腕の中、結はその温かい胸に頬を寄せた。




/ 521ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp