第14章 バースデイ
「このコ、どうするんですか?」
「このコ……って」
結の小さな手のひらで鈍く光る銀色は、中三の夏から耳を飾っていたピアス。
あまりの痛さに片方しか開けられなかったことは、いつか笑い話として彼女になら話してもいい。
「う〜ん、どうしよっかな。もうコレ以外着ける気しないんスけど、捨てるのもなんか違うっていうか」
「じゃあ……私が預かっててもいいですか?」
「え、結は穴開けてないっしょ?どーすんの?」
「な、内緒です」
ちょっと照れたような結の笑顔。
黄瀬は目を細めながら、彼女の柔らかい耳朶にそっと触れた。
「オレに隠し事っスか?いつか暴いてやるから覚悟してて」
「その勝負、受けてたちます」
今日は最高の誕生日だった。
たくさんのハジメテをくれる彼女には、どんな感謝の言葉も足りなくて。
来年も再来年も、ずっと隣に……
その願いを叶えてくれるのは彼女だけ。
「ケーキ、そろそろ食べませんか?お菓子作りはどうも苦手で、残念ながら手作りじゃないんですけど」
「そーなんスか?なんか意外……」
(まあ、甘いものは結のキスが一番の好物なんスけど)
可愛い唇を見つめながら、黄瀬はペロリと唇を舐めた。
「一年かけて特訓します。だから……来年も一緒にお祝い、させてくださいね」
先に言われてしまった悔しさを誤魔化すように、黄瀬はその唇を深く塞いだ。
まだ照れくさいけど、いつかきっと伝えたい。
will always love
ずっと愛してる
言葉に出来ない想いを込めて、黄瀬はとびきり甘いキスを彼女に捧げた。
end