第12章 トップシークレット
自分の身体をぶつけるようにして、黄瀬は乱暴にドアを開けた。
縦長の小窓から差し込む西日で、ムッとした熱をはらんだ空気が、火照った身体の体温をさらに上げた。
「黄瀬さ……っ」
そんなつもりじゃなかった、なんて言うつもりは無かった。
だが、どこか余裕のない黄瀬の腕の中、ドクドクと伝わる鼓動に、結は思わず制止の声を上げていた。
「ちょ、ちょっと待って」
「ハハ。待つ、ってナニを」
「わ……っ」
彼の匂いが染みついたベッドの上にポスンと身体を放りなげられて、軽やかに靡くチュールが視界をよぎる。
「……結」
「っ」
ベッドに膝をついて、上に乗り上げてくる黄瀬の獰猛な瞳から目が離せない。
「オレのコト、なんだと思ってんの?」
いつもの口調を封印し、肩で息をする彼は完全な臨戦態勢。
怖いのに、ゾクゾクするほど色っぽい。
「好きなコのこんなカッコ見てオアズケ、とか……」
ネクタイを抜き去った黄瀬が、制服のシャツに手を掛けて、もどかしげにボタンを外していく。
梅雨特有の湿気がこもる部屋の中、あらわになるその鍛えられた上半身に、結はこくりと喉を鳴らした。
「黄瀬さ」
「今日はソレ禁止」
長い人差し指が、言葉をとめるように唇をそっと押し込む。
「守れなかったらキス、だからね」
「何、それ……」
「コレはさっきの分」
「ン」
覆い被さってくる黄瀬に、目を閉じる暇もなく唇を奪われて。
「……結」
「ふ、ぅ……黄瀬さ、ン……んぁ」
お仕置きのように唇を強く吸うそのくちづけは、いつになく貪欲なものだった。
呼吸すら奪うように重なる唇と、口内に忍びこみ絡みつく舌に、結は理性の全てを吸いとられていった。