第1章 スパイダーマン×一般人
自称スパイダーマンの格好はあちこちに紐が絡まっている状態で、確かに助けがいる。
絡まってる紐は恐らくこの真上にあった洗濯物を吊るしていた紐だろう。
証拠に周りには干していたであろう服やシーツが散乱している。
あちこち絡まった紐をスルスルと少しずつ解いてゆく。
自称スパイダーマンは暇なのか話をしてきた。
「そういや君名前は?」
「知らない人には名乗るなと教えられているので。」
「……………いい教育を受けてるね。」
「ありがとうございます。ほら、解けましたよ。」
自称スパイダーマンから数歩退くと、彼は立ち上がり、お礼を口にした。
「いや~助かったよ、ありがとう。」
「いえ、ヒーローごっこはほどほどにしてくださいね。」
「いや、だから本物だって!」
「それじゃあ急ぐので。」
スマホで時間を確認すると、もう11時を過ぎており、一人暮らしだとしても流石に急いで帰ろうと彼と別れようとすると、腕を捕まれ引き止められた。
「送るよ。遅くまで引き止めちゃったし。変質者と会ったら大変だし。」
「いえ、結構です。」
「いやいや、こんな時間で女の子を一人で帰らせる訳にはいかないし。てか僕のせいだしね。」
「いや、ホントいいんで。私からしたらむしろアナタが変質者なんで。」
「だから本物なんだって!!」
あーもうっ、と頭をかき、何を考えたのかいきなり私の腰を抱き寄せてきた。
ビックリするがすぐにセクハラで訴えますよ!と言おうとしたが、急に体が浮き上がり、声が出なくなった。
「ほらね、本物でしょ?」
「…………………マジか。」
彼は白い糸を使い私を抱えたまま空を飛んでみせた。
彼は自称スパイダーマンではなかったのだ。
「家はどっち?」
「あ、あそこに見える青いアパートです。」
「ん、了解。」
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