第1章 スパイダーマン×一般人
アパートに着くまでの時間はたった少しだったのに、なんだかずっと夢を見ている気分だった。
夜のニューヨークの街はとても綺麗だった。
「はい、着いたよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
ぼけ~、としたまま礼をいい、そのまま階段を上がり自分の部屋へ戻ろうとすると、声をかけられる。
「おやすみ名無し子。いい夢を。」
「おやすみなさい。アナタもヒーロー活動ほどほどにして、休息を入れてくださいね。」
「ッハハハ!やっぱり君は面白いね!ありがとう、たまにはゆっくりするよ。」
「それじゃあ。」
「うん。バイバイ。」
スパイダーマンは先程と同じ様に手から糸を出し、夜の中へ去って行った。
さて、私も家の中に入ろうとドアノブを握り、ひねる寸前でとんでもない事を思い出した。
「何で私の名前…………、」
バッと後ろを振り返っても蜘蛛男の姿は当然無く、暫くドアノブを握ったまま固まるという可笑しな格好を続けていた。
end.