第5章 アイアンマン×発明家の助手2
「トニー・スターク…………!!??」
思いもよらなかった大物の登場に開いた口が塞がらない。
そんな名無し子などお構い無しに、トニー・スタークは中に入るやいなや、ジュークを見つけて近づく。
「やぁ、久しぶりだなジューク。僕のパーティーをフッてどんなポンコツを作ってたんだ?」
「会いたかったぜトニー!なに、ただのガラクタだ。お前の所に比べたらマシだけどな。」
「オイオイジョークじゃないか。熱くなるな。」
ハハハハハ……、とお互い引きつった笑顔で対応している。
どんだけ嫌いなんだお前ら。
「今日はちゃんと用があって来たんだ。話しても?」
「どうぞ。」
「僕にコレを売って欲しい。」
そう言って彼は懐からメモの紙を取り出し、ジュークに渡した。
「この鉄か………。こんなもん何に使うんだ。これは使い勝手が悪いだろう。」
「スーツの武器にちょっとね。」
「どの位だ?」
「あるだけ。」
ジュークは発明家であるが、趣味も発明なので、彼はそこらの商人よりも鉄やネジなど、発明で必要な物は揃っていたりするのだ。
スタークの様に、売って欲しいというケースは初めて見たが。
「名無し子。」
「はいはい。」
ジュークの後ろからメモを覗いていた私は、さっさと書いてあった鉄を用意する。
全部で20kg程だった。
「じゃあ振り込んでおくよ。」
「あぁ。」
「あ、そうそう君。」
「はい?」
急に呼ばれて驚く。
「やっぱり僕の所にこないか?」
「おい、ウチのを勧誘するな。」
「でもシンデレラにガラスの靴を届けるのは王子様の役だろう?」
そう言うとスタークは、ずっと持っていた鞄の中からヒールの靴を取り出した。
「あぁ!私の靴!!」
「本当にシンデレラの様に片方だけ落としていくからな。ピッタリか確認しても?」
そう言って彼はヒールを持って跪いた。
私は戸惑うけれど、諦めてスタークが手にするヒールに足を入れる。
「うん、ピッタリだ。」
「あ、ありがとうございます。」
「これからお城まで行かないか?」
チュッと私の手の甲にキスを落とし、上目遣いでウインクされる。
ブワァッと顔が熱くなるのがわかる。
「ひゃい、」
「いや、行くなよ。」
ジュークの冷静な声が部屋に響いた。
end.