第1章 スパイダーマン×一般人
今日は本当に今までどおりの生活だった。
朝ギリギリの時間に起きて、大学に行って、友達とランチして、バイトに行って、家に帰る。
はず、だった。
深夜11時に差し掛かった時間は、普段は子供が遊んで騒がしい道も静まり返り、カエルの声が聞こえる程度だった。
バイト先であるカフェは夜の9時まで営業していて、たまたま9時までのシフトが入っていた。
その後普段ならすぐ帰るが、今日は帰り道に高校の友人と再会し、近くのファーストフード店に入り会話を中心とした夕飯を済ませた。
気づくともう10時半になっていて、お互い遅いからと解散し、いつもより遅い時間にこの道を通る事になってしまった。
この道は昼間と違い人気がないので苦手だった。
早く帰ろう。
ゆっくりだった足取りを少し速めた時、
「あー、誰か居る?」
!?
誰も居ないと思っていたため驚きで
叫びそうになった。
バクバク言ってる胸に手を当て深呼吸する。
ハァ、ビックリした。
「えっと、何ですか?」
「いや、驚かせてゴメンね。ちょっと手を貸して貰いたくて……。」
声は男の人のもので、路地から聞こえる。
手を貸すって……、悪い人とかじゃないよね。
怖い人ならどうしよう…。
「怪しい者じゃないよ。見ればわかると思うけど……。」
見ればわかる?
じゃあ取り敢えず顔見てヤバそうなら逃げよう。
少しずつ声の方へ近づくと、見た事ある、
いや、みんなが知ってるヒーローが……
「…………スパイダーマン?」
「その通り!」
私は直ぐさま身体を回転させ、来た道を引き返した。
早足で。
「ちょ、待って待って待って待って!!!」
「ヤバイ人だった、コスプレしたヤバイ人だった。」
「ちがっ、ホンモノ!本物だから!!」
ピタリと足を止めコスプレ野郎を見る。
「本当に本物何ですか?」
「うん!本物だよ!!糸とか出せちゃうよ!!?」
コスプレ野郎がとても必死だったので、
取り敢えず話を聞いてみる。
「一応聞きますけど、どうしたんですか?」
「いやぁ、疲労のせいか、泥棒は捕まえたけどちょっとヘマしちゃって……。」
「はぁ。」
「解くの手伝ってください。」
「………………わかりました。」
「あ、ありがとう…。(凄く嫌そう……。)」
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