第1章 ようこそ、ホグワーツへ
ダンブルドアさんが引き出しから小さな瓶を出す。
「これを君に渡そう」
手のひらほどの瓶の中には薄いオレンジ色の液体が入っている。
「……?瓶?」
蓋を開けてみると、甘酸っぱく爽やかな香りが鼻を抜ける。
「人魚の涙が入ったシトラスの香水じゃよ」
人魚の涙……。
魔法界には人魚までいるのか。
ん?シトラスの香り……ラッキーアイテム!?
「いつか必ず、君の役に立つ」
「つけてみてもいいですか?」
シュッと手首に振りかけると全身が軽くなるような、そんな香りに包まれる。
どこか懐かしい、落ち着く香り。
「いい匂い……」
「気に入ってもらえたようじゃな。……さっき、自分がここに来た理由を知っている、と言ったな」
ダンブルドアさんは立ち上がり、部屋の奥へと歩いて行った。
私も慌ててついていく。
「これは憂の泉と言ってな。考えや思いが溢れそうなときはこんなふうに一旦頭の中から取り出してこの泉の中に保管しておくんじゃ。また別の日に改まってその出来事を泉越しに見たとき、違った角度からの考えや、その時気づかなかったことが見えてくる」
杖みたいな物を取り出し、自分の頭に当てると白いモヤモヤしたものが出てきた。
「1ヶ月くらい前の話になるのう。この泉に、予言が映し出されたのじゃ」
「予言?」
モヤモヤしたものを試験管みたいな細長い瓶に入れると、ダンブルドアさんは泉の水を掬い、どこから出したのか、金色の器に入れて私に差し出した。
「近いうちに魔法界の運命を変える者が現れる。その者に人魚の涙を使った香水と、この泉の水を与えよ、とな」
飲んでみなさいと言われ、少しだけ口に含む。
「……っ!?」
目の前がバチッと光ったかと思うと体の中から何か湧き上がってくるような感覚。
「なに、これ…」