第1章 ようこそ、ホグワーツへ
雲を抜け、もうこれ堕ちてんじゃないかってくらいのスピードで降下し、勢いよく地面に着陸した。
激しい衝撃にお尻が浮いて椅子にまたぶつかる。
「うわあっ、と、おっ」
ハグリッドさんは慣れてるのか、それとも身体の大きさのせいか、モサモサの髭と髪が揺れただけで何事もなかったようにエンジンを止めた。
乗っていたのは10分くらいだったけど、なんかあまりにも一瞬の事すぎて頭が追いつかない。
放心状態とはこういうことか。
「さあ着いたぞ、ダイアゴン横丁だ」
そこは人がひしめき、忙しく歩く大きな商店街のような場所だった。
道の両側には様々な店が立ち並び、杖や箒、フクロウに空飛ぶおもちゃ、見たことのない植物などがショーケースを賑わせていた。
「すごい……ここで必要なものを買うんですか?」
「ああ、大体のものは揃う。人が多いからな。はぐれんように気をつけろよ」
大きな身体で人をかき分けて歩いていくハグリッドさんの後ろを必死についていく。
「えっ、と私何がいるかとか聞いてないんですけど…」
それもこれもあの髭もじゃおじいさんが話も早々にどこかに消えてしまったからだ。
もう少しいろいろ説明してくれてもよかったんじゃないか。
魔法のことは愚か、自分のことすらよくわかってない私はここでは赤ん坊より無知だ。
「そうなのか?…まあとりあえず大方の物を買えばいい。足りなければまた俺に言ってくれ」
「あっあとお金も無いんですけど…」
スクールバッグに財布は入ってるけど円がここで使えるとは到底思えない。
そもそもこの世界で使われてる通貨ってなんだ?
ドル?ユーロ?
「それなら心配いらねえ。ダンブルドアから十分な額をもらってるからな」
学校生活で必要な物を全部揃えれるだけのお金を、いくらこの世界の運命を変えるからとは言え全然知らない私にポッと渡せるなんて…。
……ますます何者だあのおじいさん…。
やっぱ私死んでない?
それか盛大なドッキリでした!って言われた方が安心する。