第1章 待ち遠しいその日
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「ねえ、親友の死ってこんなに心が軽いものなの?」
「知らねーよ。」
「あ、ごっめーん。万事屋さんには親友が居ないんでしたっけ。」
「うっせー、放っておけ。」
親友がいない発言を否定しない坂田銀時に、京はクスクスと笑う。
京が総悟と部屋を入れ替わって間もなくして、ミツバは亡くなった。治療室の窓から沖田兄弟の様子をしばらくは眺めていたが、京は気分転換にでもと病院の屋上へ足を進める。階段を上がる途中、上から下りてきた土方と遭遇した。
見上げた彼の顔には泣いた後がはっきりと残っていたので京は驚きを隠せなかった。恐らく土方も土方で、面をなるべく人には見られたくなかったのだろう。少々気まずい雰囲気に成ったが、開封された激辛せんべえの袋を目の前に振りかざしながら「違うからな! これはアレじゃないからな! 辛ぇせんべえ喰ってたから、そう見えるだけだかんな! 勘違いすんじゃねーぞ! 分かったな!?」と叫ばれ、逃げられた。
まあ良いか、と走りさる鬼の背中を見届ければ、京はそのまま屋上へと足を進めた。ドアを開け、涼しい朝風に当たりながら屋上を歩き回れば、今度は万事屋の坂田銀時を見つけたのである。彼もまた激辛せんべえを手にしており、それを食べていた顔は笑えた。ただでさえ死んだ目で生気の無い顔立ちだと言うのに、その上に目は赤くなって鼻水も垂れていたのだから笑わない訳がなかった。お陰で、顔を着物の袖で拭いた銀時に拳骨を落とされるまでは笑い死ぬほど腹が痛かった。