第1章 待ち遠しいその日
しばらく楽しい話をしていれば、京は治療室の外に人が集まるのに気づいた。どうやら男共が捕り物から帰ってきたらしい。医者から説明を受けているようで、弟の総悟が部屋に入るのも時間の問題だろう。最期は家族に看取られるのが良いはずだと思い、京は部屋を出る頃合いだと判断した。
「あ、ようやく弟君のご到着みたい。素敵なお姉さん、チェンジをご希望ですか?」
「そうね。貴女との時間も楽しいけれど、魅力的な殿方ともお話してみたいわ。」
「では、仰せのままに。」
手を再び握り直し、最後まで明るいノリで京はミツバの側を去る。しかし治療室の戸に手をかけた瞬間、彼女の動きは止まった。もう一度、ベッドに横たわる友に振り返る。
「ミツバ。」
「なあに?」
「またね。」
「ええ。次ぎ合う時、貴女がお婆さんになった姿を楽しみにしてるわ。」
両者は笑顔で、彼の世での再会を願う別れの挨拶をした。