第1章 待ち遠しいその日
「あー駄目だ。ミツバ、アンタもう三途の川渡りそうになってるよ。あんなフンドシに染み付いた垢みたいな連中が良い男な訳ないじゃない。ゴツいし、臭いし、何か頼りないし。」
それこそ武州にいた頃からの付き合いだ。肩書きや仕事っぷりを見れば格好良い連中なのかもしれないが、中身はただのアホ。性格は不器用でも気のいい奴らなのは知っているが、やっぱり中身はただのアホ。大捕り物などでの命の奪い合いでは背中を預けられるが、人生を預けるのにはちょっと……、と言うのが京の言い分である。何よりもここまで戦友として見て来たのだから、今更恋愛対象として見てやれと言う方が難しい。
「んもう、京ちゃんったら。素直にならないと本当に行き遅れるわよ? 京ちゃんは素敵な女の子なんだから、素敵な男性と幸せにならないともったいないわ。せっかく男の人たちに囲まれてるんですもの、真選組限定とまでは言わないけど、環境を有効活用しないと駄目よ。少しだけあの人達に頼ってみなさいよ。きっとイチコロで一人は射止められるわ。」
「え、あんなに沢山いる真選組隊士の中で一人しか釣れないって事? どんだけ魅力ないの、私。」
「でも人生に愛せる人は一人で十分よ?」
「ほう、やっぱり恋愛経験者の言葉は違うねぇ。」
きゃっきゃうふふと二人は恋愛をネタに笑い続けた。真に惚れた男と共に生きる事は叶わず、やっと夫婦になれる人を見つけたと思えばそいつは悪人。美人薄命とはよく言ったもので、ミツバほど幸せになる権利を持つ娘が、結婚と言う女の幸せを味わう事なく逝ってしまう。それでも明るく、京の恋愛にまで口を出せる彼女は本当に強い女だ。