第1章 待ち遠しいその日
「京ちゃん。」
考えに没頭していれば、いつの間にか目覚めたミツバに人工呼吸器でくぐもった声で名前を呼ばれた。目が覚める事があれば呼吸器を外しても良いと、医者の許可を得たてるため、京はミツバの顔から丁寧にそれらの器具を外した。
「んー? なあに?」
「私、京ちゃんと親友になれて幸せよ。」
突然なにを言い出すかと思えば、嬉しい事を言ってくれる。ミツバの手を握り直せば、京もミツバに返事を返した。
「ふふ、ありがとう。私もミツバみたいな親友を持てて、幸せだよ。アンタはあのむさ苦しい連中の中に放り込まれた私の癒しだからね。」
「京ちゃん。京ちゃんも早く好い人見つけなさいね。おばさんな私にも見つけられたんですもの。京ちゃんにも素敵な人が現れるわ。」
いつから意識が戻っていたか知らないが、どうやら最後ら辺のぼやきは聞こえていたようだ。
「ちょっと嫌だ、私たち同い年よ。私もおばさんの仲間入りさせる気? 私はまだバリバリの現役のつもりなんだからね。それに男が出来ないのは、周りに良い男がいないからなの! なんとかしてよ。」
「ふふふ、そうかしら? 私には選り取り見取りのように思えるわ。」
雑談をする気力は十分あるようなので話題を続けたが、「選り取り見取り」と言われた京は隠す事なく表情を引き攣らせた。