第1章 待ち遠しいその日
喋る事は自身が働く真選組での愚痴ばかりだが、それは長年ミツバとしてきた文通の内容と同じだ。なるべく明るく、なるべく楽しく、なるべく「いつものように」京は意識の無いミツバに語りかける。
「まったく、これだから男って馬鹿よね。こんなに良い女が手前の帰りを待ってるってーのに、『仕事、仕事』って煩いのよ。仕事人間の私でもそこまでしないわ。その上、自分勝手で自意識過剰でさ。格好つけて威張る割には間抜けな所もあるし。ほんと、意味わかんない生き物よね。」
女であるが故に、真選組にいて気づき、溜まる鬱憤もある。それを話し始めれば流れるように京の口から言葉は流れた。
「しかも何かプライドも高いらしいから、こっちが時々折れてやんないと拗ねるんだもの。何よ、マヨネーズって。別に特売日だからっていっぱい買う必要なんて無いじゃない。一本で十分だってーの。前に買ったマヨなんて使う機会が少なかったから賞味期限切れたのよ? それを分かってるのに何で五本も買わせようとしてんのさ。買いたけりゃあ自分の金で買えってんだ! あ、そういやアイツの買い物カゴはマヨネーズの山だったっけ? どうだったっけ? んもう、図体はでかいくせに大人ぶってる子供みたいで笑っちゃう、っていうか相手するの面倒くさいわ。」
特に特定の人物を思い浮かべているのか、京の愚痴は意外と具体的だった。真選組の者、もしくは真選組と関わりがある者ならば容易に誰の悪口を言っているのかが予想出来る。