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モノグラム

第39章 ステップ




私の方は

ため息をつきながら見てると


大倉「あと....」


言葉を言いかけて止めた


「あと?」


私は静かに聞いた



大倉「俺以外は

誰も幸せに出来へんと思ってる」




彼は照れくさそうに言ったのだ




大倉「今夜もドライブに行きましょうか?」



そう言うと車を動かし始めた


しばらく走っていると



大倉「実はさぁ

映画の主演が決まってん」



「そうだったんですか?」



私は外の景色を見ていたが

彼の方を向いた

その話に喜んだ



大倉「まぁ、その.....」



すると突然

彼が言葉を濁した


「......」


言ってくれるのを私は待った



大倉「ちょとなぁ....」



「ちょっと?」


なかなか彼は言い出さない


黙って私をチラチラ見てくる

これは何かあるなと鈍感な私でも感づく


「なんですか?」


私は強めに言うと


大倉「実はその映画さぁ

キスシーンがあるん」



私の表情が止まった

彼はその事に気が付くと

不安そうに私を見てくる



大倉「仕事でやからさぁ....」



私はため息をついた



そうだ彼は芸能人

こんな事は仕事では当たり前



頭で理解しようとした




大倉「怒るわなぁ...

俺が立場逆なら

怒るもんなぁ....」



彼は落ち込んだ顔で

運転をしていた



「.....仕方ないですよね」



私は自分の感情を

必死で抑え込もうとした

その時

彼はゆっくりと車を道の脇に停めた



動いてない車のハンドルを握ったまま

私より落ち込んでいる

彼を見て私は愛おしくなって

小さく笑っていた



「それが

大きくなるためのステップなら

一緒に耐えなきゃならないですよね」



私は彼に向かって

自分に向かって

呟いた



私の言葉を聞いて



大倉「ステップか....」



静かに私を見つめてきた



「ステップですよ」



私が微笑むと彼も微笑み返してきて

そっと私の手を握った




彼の温かさを感じながら

私は自分の中に

小さい嫉妬という感情が

生まれて来たのを

まだ知らなかったのでした



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