第21章 状況
本当は彼の胸に飛び込みたかった
告白に似た言葉の意味は私も分かった
嬉しかった本当に
でも....
私は自分の左肩をそっと抑えた
私の心が疼くたびに肩の傷も痛むのだ
この傷を彼は知ったら....
「感謝はしてます....
でも....」
私には分かっていた
マネージャーさんが反対する意味も
私が彼の横に居てはいけない事も
ちゃんとわかっていた
でもそれを彼に伝える事が出来なかった
まだ伝えて離れる勇気がなかった
温かさを知ってしまったから
大倉「ぜんぶ言わんでええよ....」
そう言うと私を優しく抱きしめた
彼の温もりは私の心を温める
私に未来の期待を持たせる
「私たちは友達ですね....」
勇気をだして言うと
その言葉に彼は驚いて私の顔を見た
でも
一瞬で悲しそうな顔になった
大倉「おい....」
その時
私の目からは勝手に涙が溢れ出していたのだ
私自身も驚いて必死で拭きながら笑った
「すいません、情緒不安定で....」
そんな私に
大倉「ほんまに、素直ちゃうなぁ」
呆れるようにため息をついた
「それが私なんで....」
そんな私の強がりに彼は小さく笑いながら
大倉「その言葉、久々に聞いたな」
彼は嬉しそうに抱きしめる腕に強さを入れた
私はつられて笑いながら
彼の優しさに感謝していた
でも......
お互いの気持ちは分かっているのかも知れない
でも、環境が状況がそれを許さない時がある
そんな時はどうしたらいいのだろか?
今、私たちは正にその状況に置かれていた
自分の気持ちを相手に伝える事すら
出来ない二人はただ、どうする事が正しいのか
お互いに必死で探り合っていたのだった