第21章 状況
彼は私を夜景の見える場所に案内したのだ
大倉「さて、ヤスに連絡いれとくか....」
そう言うとスマホを取り出し打ち始めた
私は目の前に広がる夜景に見とれていると
大倉「綺麗やろ?」
「とっても....」
私が嬉しそうに伝えると
彼は得意げに
大倉「女の子は好きやからな....」
その考え方にムッとした私は
「そうですね
落とす時は連れて来ているんですか?」
私の棘のある言葉を送り付けると
彼の顔が真っ赤になった
どうやら図星のようだ
私はため息をつきながら少し笑った
大倉「な、なんやんね
俺かて男やし」
「大丈夫ですよ
女には見えていませんから....」
呆れながら言う私に
大倉「この景色を見て落ちへんかった
女はアンタだけやった」
「........」
しばらく無言で見つめ合った
大倉「今回は落ちてくれるんかなぁ?」
彼は恥ずかしそうに言った
「無理ですね....」
私は俯きながらだがキッパリと答えた
大倉「やっぱりね....」
彼は答えが分かっていたのか
あきらめが早かった
私はことばを選んで気持ちを伝えた
「まだ、忘れられてないんです....」
本当は幸せになっていいのか
まだわからなかったのだ
心はまだ切り替えが出来ずにいたのだ
私の言葉を予想していたのか
彼は優しい声で言った
大倉「そりゃ、そうやんな....」
私はゆっくりと夜景に目線を逸らした
彼の悲しそうな表情を見るのが辛かったから
景色は心と裏腹に
悲しずぎるぐらい綺麗だった