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モノグラム

第20章 心の中は




彼の腕がそっと頭に伸びてきた


大倉「ありがとうな....」


その言葉と同時に頭を撫でてくれた

私は無言で首を振りながら


「あと...

ため息は癖なんで....

気にしないでください....」


私の言葉に彼は突然吹いた


大倉「なん、それ!迷惑な癖やなぁ」


やっと見れた笑顔だった


「......」


私は嬉しかった


でも、こんな時に自分の性格は嫌やだった

素直に微笑まれない自分が


大倉「はいはい、言いませんよ」


呆れるように言うと、彼はまた歩き出した

そんな彼の背中に私は問いかけた


「安田さん、ここは分かるんですか?」


大倉「後で、送っとく」


「本当に、安田さんが可哀そうですよ」


私の言葉に、彼は怒った口調で


大倉「マネージャーの肩を持つアイツが悪い」


その言葉に私はため息をついた


「でも、マネージャーさんの言っている事は

間違いでもないです....」


私の言葉に彼の足の進みは止まった


大倉「なら、もう会えんでもええん?」


その言葉が本当に重かった

何と答えたらいいのか迷った

答えられない私に彼は振り向いて待っていた

だから思い切って言ってみた


「私は、タイプの女じゃないので....」



大倉「ちょ!あれはアイツが勝手に言っただけや!」


「そうですか?」


私は、少し嫌味ぽく言うと

立ち止まっている彼を追い越して

一本道の先を歩いて行った



大倉「惚れた奴がタイプやし!」


私の後ろで彼は言った


「はい、はいそうですか?」


私は少しだけ微笑んでいた

でも後ろに歩いている彼には

見られる事はなかった

それが私に安心を与えていたのだ


大倉「なんやねんなぁ」


彼は少しだけ怒っているようだった


「別に何もないですよ....」


大倉「ふ~ん、そうですか」


「そうですよ....」


こんな二人の会話が好きだった



 私の心は揺れていた

でも、今だけは楽しませて欲しいと願っていた


自分たちではどうする事も出来ない

大きな障害を目の前に私たちは

今は楽しむ事だけに目を向けていた

それにワザと目を向けないようにしていたのだ


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