第19章 痛み
そんな私を見ていた彼は
何を思ったのか
食べ始めようとしていた
安田さんの頭を軽くはたいたのだ
安田「いたっ!」
突然の事に驚いた安田さんは彼を見ると
大倉「ほんまにアホ!」
そう軽く怒ったのだ
そして何もなかったように
ホークを持って料理を食べ始めたのだ
叩かれた安田さんは
不思議そうな顔をしていたが
一度首を傾けると
彼に遅れる感じで食べ始めた
私はその様子を見て
胸がチクチクと痛むのを必死で抑えていた
私は何で彼と一緒にいるんだろ
彼は何で私といるんだろ
気まずいままの料理が終わり
食後の飲み物を飲んでいる時だった
安田さんが席を立っちながら
安田「先に帰ったらアカンからな!」
そう言うとトイレに歩いて行ったのだ
久しぶりに二人っきりになった
なぜかホッとしている自分がいた
すると彼が申訳ないように話し始めた
大倉「今日は、ほんまにごめんな....」
「何か事情があるようなので....」
私は安田さんから
マネージャに頼まれた事を
聞いてない振りをした
大倉「事情ねぇ......」
彼は言葉を呑み込んだ
「私は大丈夫なので....」
本当は
心のどこかで楽しみにしていたとは
言えなかった
そして言う気もなかった