第19章 痛み
店の中では、私は注目されていた
アイドル二人と席を一緒にしているのだから
見ない方が変だと思うが
静かな店内がざわついているのに
当の本人たちは
そんな事を気にする事もなく
リラックスしながら過ごしていた
安田「こんな店を良く知ってたなぁ?」
店をキョロキョロしながら言うと
大倉「ネットで見つけた」
スマホをいじりながら冷たく返事をする
安田「ふ~ん」
彼のスマホを覗き込む
大倉「なんやんねん」
スマホを覗かれたくないようで身体を動かし
見えないようにしながら言うと
安田「いやぁ
マメやなぁって思ってさぁ
ねぇ?」
安田さんは私に返事を振ってきた
「えっ?」
私が焦っていると
彼は私をチラッと見ながら
大倉「意味わからんわ」
彼の機嫌はずっと悪かった
すると安田さんは
私に笑顔を見せながら
安田「大倉とはさぁ
どんなんして知り合ったん?」
突然の質問に私は戸惑った
「えっ?」
私の返事を期待しているように
嬉しそうな笑顔が
本当に可愛い人だと思ってしまう
「そのぉ、私の店で閉店するのに眠ってて...」
その言葉を聞くと
安田さんは彼を見ながら
安田「寝てたん?」
大倉「お前が来んかったからやろ」
安田「あぁ、あの時ね」
安田さんは思い出すように笑った
安田「でも
それだけで、こんな風になるん?
大倉の好みのタイプちゃうしさぁ....」
何気ない一言が
私の胸に突然 突き刺さった
「まぁ、話が長くなるんで....」
私は言葉を濁した
今までの私たちの事を話せなかった
私の過去の事もあったから...
話せなくなって俯いた時に
料理が運ばれて来たので
安田さんの気持ちはそっちにそれた
綺麗に盛り付けられた料理を見ても
私の気持ちは重かった
微笑む事が
出来なくなってしまったのだ