• テキストサイズ

モノグラム

第12章 違い





 私は、ある人物と目が合ってしまった



「あら、こんな所で会うなんて....」


あの時の衣装さんが私を見つけたのだ

私は頭を下げながら


「あの時はお世話になりました」


彼女は嬉しそうに私に近づいて来ながら


「大倉君は、知ってるの?」


仕事をしている彼を見ながら言った


「いいえ、偶然で....」


私も彼の事を目で追った


「そっか、でも会いに行ってあげてよ

喜ぶと思うよ」


彼女の話に驚いた


「あの日から、貴女の事をね.....

私に話してばっかりだから」


「どういう事ですか?」


彼女は、その質問に答えようか

少し困った顔をしていたが


「貴女の様子が心配だったみたいでね

何があったのか教えてって」


何故そんなに私を気にするだろ

どうして、彼女の言葉が

私の胸を熱くするのだろ


私はその答えを知っていた

だけど、認めてはいけなかった



「あの事は言ってないからね」


彼女は優しく微笑んでくれた


「.....ありがとうございます」


軽く私は頭を下げた


「あっ、私 戻らないと怒られっちゃう

それじゃ、またね」


そう言うと彼女は

急いで人混みの中に戻って行った



仕事をしている彼を人混みの間から見つめた



私は、素直になる事も

彼に思いを寄せる事も出来ないのに


私の心は彼に向いていたのだ

でも、それは決して許される事ではなかった



何があっても私は自分の気持ちを

彼に打ち明ける事は出来ない.....


肩の傷が疼き始めていた

私を責めるように


/ 189ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp