第12章 違い
撮影から帰った私は
自分の日常に帰って来た
でも、
私の心はあの日から変化していたのだった
彼は、その日から仕事が忙しいようで
店には来なかった
気が付いたのだ
私と彼が会えるのは
彼が来る
それだけで
二人には何の連絡手段もなかった
私は待つしかなかった
でも、待つというのは
恋い焦がれている人のようだ
そんな自分が許せなかった
私は
一人で生きていかなきゃならない人間なのだ
彼に思いを寄せる事すら
私には許されない
私は心の中で願っていた
このまま彼が私を忘れてくれる事を
それで良かった
シンデレラの様に魔法が解けて
かぼちゃの馬車もドレスも消えたのだ
夢みたい日々は終わったのだ
そして、私にはガラスの靴はない
王子様も迎えには来ない
そう自分に言い聞かせて過ごしていた
私は、ある日の午前中
仕事が休みな事もあり
久しぶりに買い物に出掛けていた
何を買うわけでもなく
ぶらぶらと歩いていた
すると私はCDショップに足が止まった
店に入り彼の曲を自然に探していた
その時、私の耳にある言葉が入って来た
『関ジャニの大倉が、ロケしているって!』
女の子たちは口々に言いながら
嬉しそうに走って行った
今までの私なら帰っていたと思う
でも、
その時の私は自分の気持ちを抑える事が出来ずに
その撮影を見に行ってしまったのだ
大勢の人に囲まれて仕事をしている彼は
やはり別人だった
その瞬間に胸に大きな穴が開いた気がした
私の知らない顔で彼が微笑んでいる
私はここに居ることさえ知らない
傍にいるのに遠い距離
私は足を動かし帰ろうとした