第10章 傷跡
私はそのまま静かに着替えに戻ろうとすると
そこに衣装に着替えた彼がやって来た
大倉「お疲れさん」
彼はいつものように話しかけてきた
「おつかれさまです」
大倉「ほんまに、ありがとうな」
「いえ....」
すれ違う私の肩を彼は軽く叩きながら
大倉「次は俺が頑張ってくるわ...」
そう言い私に見せた背中は
今までの彼の背中ではなかった
私は何故か立ち尽くして彼を見ていた
スタッフに見せる彼の顔は仕事の顔
そう私に見せていた顔ではなかった
「これが、大倉さんの仕事か....」
私は、ため息をつきながら
私はその場から去った
彼を見ているのが辛かったから
着替えをしに戻ると
女の人は笑顔で迎えてくれた
「お疲れ様です」
「ありがとうございます....」
私は、彼女に頭を下げると
彼女は私に嬉しそうに言った
「実はね
今回のコンセプトは大倉さんが考えたの」
「そうなんですか?」
「私が思うには、
貴女を思って作ったのかもね」
そう嬉しそうに言うと
彼女は他の仕事を始めてしまった
その瞬間
私の胸には違う痛みが生まれていたが
私はそれを必死で隠そうとしていた
それを認めると
もう彼の傍にはいれない
そして、鏡に映る私の罪の傷が
そう私に告げていたのだ