第10章 傷跡
私は、夏でも決して半袖を着ない
それは自分の罪を隠す為に
更衣室から出て来た私を見て
女の人は驚いていた
「すいません...
私は...半袖が着れないです...」
私の言葉に女の人は微笑んだ
「それなら、この紺を着ましょうか?
たぶん、違和感もないと思うです
そして他の人にも見えないですよ」
言いながら紺色のカーディガンを持ってきて
優しく肩にかけてくれた
「ありがとうございます....」
私は俯いた
「いいえ
知らなっくて本当にごめんなさい」
私は、鏡の中の自分を見つめた
そう私は
この傷と引き換えに命が助かったのだ
左肩から腕にかけて大きな傷跡を残して
メイクをされて準備が出来た私は
カメラの前に立たされた
私には演技など出来ない
いつものように歩くだけ
そうこの私で歩くだけでよかった
お墓....
私が会いたい人が眠っている場所
本当ならあの日から私も眠るはずだった場所
私の胸の痛みは大きくなっていた
自分の罪が私の胸を容赦なく痛めつける
「カット!!!!!!!!」
私は現実に帰って皆を見ると
スタッフは驚いた顔をしていたが
突然拍手してくれた
そして、彼のマネージャーが
私の所にやって来て
「本当に素晴らしかった
大倉の目は正しかった」
私は突然恥ずかしくなっていた
こんなに絶賛されるとは
思ってなかったから
「いえ、お役に立てたなら....」
そして私は思っていたのだ
今、自分は何をしてるんだろうと
場違いな場所に立ちながら