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モノグラム

第10章 傷跡




 私は次の日の午前中に約束をした

夜には仕事だったからそれまでの約束での

撮影にしてもらったのだ




店の前で待っていると

黒いワゴンが目の前に止まると

背広を着た知らない男性が降りて来た

そして

周りを気にしながら話しかけてきた


「大倉から話を聞いております

どうか車に乗って頂けますか?」


そう言いながら私に名刺を渡してくれた


「マネージャーさんですか?」


男の人は頷くと

急いでワゴンの後ろのドアを開けた

私は誘導されるままに

真ん中の座席に座ると


大倉「おはよぉ」


彼が一番後ろの座席に座っていて

眠そうに挨拶をしてきた


「おはようございます」



私も挨拶を返すと車は静かに動き出した


すると彼は自分の鞄をガサガサと

何かを取り出しながら


大倉「これが、今回のイメージなんやけど」


彼から一枚の紙を渡された


そこには女の人が綺麗な墓地を

歩いている姿が描かれていた


彼は私の紙を一緒に覗き込みながら


大倉「恋人に死なれた女性のイメージなん」


その言葉に胸が激しく痛む

だが、それを知られないように平静を装う


大倉「彼のお墓に行く所をさぁ

撮りたいねん」


私は、彼の言葉を聞いた後に

絵を見ながら質問をした


「衣装はこれですか?」


大倉「おん、そうやけど....」


彼は不思議そうだった


「出来れば長袖をお願いしたいのです....」


大倉「えっ、そうなん?」


彼はそう言うと悩みだした


「本当にすいません....」


その時だった

運転していたマネージャーが

口を挟んできた


「衣装の方に伝えておきますので

気にしないで下さい」


「ありがとうございます」



私はマネージャの言葉で安心したが

窓の外の景色を見て

一人で胸の痛みに耐えていた



彼は私の様子に気が付いたのか

私に話しかける事もせず

自分も深く座りなおして景色を見始めた



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