第82章 戻る
次の日に
私はため息交じりで仕事場に向かっていた
もちろん、足元を見ながら指輪を探していた
どんなに自分を責めても許されなかったから
そんな重い心の私に後ろから声がかかった
「先輩、おはようございます
俯いてどうしたんですか?」
振り返って見ると
後輩が少し息を切らしながら
走って近づいて来た
そんな彼女の顔を見ながら少し微笑むと
「おはよう、ううん何もないよ」
そう告げると一緒に店まで歩き始めた
すると彼女は
「あっ、そうだ・・・・」
彼女は言葉と一緒に鞄を探り
あるモノを私に渡したのだ
「先輩のロッカーの下に落ちてましたよ」
私の手のひらに指輪が乗っていた
「昨日、ラインで連絡はしたんですよ
先輩の大切なモノだから
でも既読も付かないから
今日は早めに来て渡そうと思ったんです」
そう言うと驚いている私に
彼女は心配そうに話を続けていた
「もう、落とさないでくださいね」
自分の手に戻った指輪を見つめ
「あ、ありがとう・・・」
私のお礼に
彼女は嬉しそうに微笑んで答えてくれた
そんな彼女に私は聞いてみた
「ねぇ、奇跡ってあると思う?」
その言葉に彼女は少し考えると
「あると思いますよ」
「そっか・・・」
私は嬉しくなって返事をすると
彼女は言葉を付け加えた
「でも、それは努力をした
人の所にだと思いますがね・・・」
私は彼女を見つめた
「拗ねていじけてる人には
神様も助けてあげたくないかなぁって」
そう言いながら彼女は笑った
その言葉に私も笑いながら
「ふふっ、そうだよねぇ・・・」
私は手にある指輪を見つめて
私はいじけずに頑張ったから
奇跡が起きたのかと思っていた
もしかしたら、これから先も
何があっても、どんなに苦しくても辛くても
必死で努力したら、必ず奇跡という光は見えるのか
そんな自分でありたいと思った
手のひらにある指輪が
その奇跡の光に見えていた
色んな事を教えてくれた奇跡に
何よりも感謝して私はそっと薬指に指輪をはめた
自分の中で大きな決意をして