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モノグラム

第8章 距離




 彼は、しばらく私を見て笑っていた

大倉「実はめっさ単純やな」


そう言いながら嬉しそうだった


「大倉さん...」


私の突然の呼びかけに彼は

笑うのを止めた

山のレストランの事があったから

彼は身構えていた




「どうして、私に会いに来るのですか?」


私はずっと不思議だったのだ

アイドルのモテる彼が

こんなファミレスの店員に


「大倉さんなら

慰めてくれる友達は

沢山いると思います

優しく抱きしめてくれる人も....」


私は冷静に彼に話した

彼はその言葉を聞くと私を見据えて


大倉「おるよ」


私は静かに彼を見つめ続けた

彼は、

顔を少し下向けながら頭をかき


大倉「でもさぁ、俺の看板で

優しくされても嬉しくないしさ...」


「看板?」


彼は突然背中を向け

私に顔を見せないようにした


大倉「初めてやった

俺が声をかけても

ちっとも喜ばんかった女は...」


「そうですか....」


彼の話を聞きながら

初めて彼の背中が小さく見えていた

私のこの性格が

彼のプライドを傷つけていたとは

知らなかった

でも・・・

私は自分を崩すことは出来なかった


「あんなに店で寝てた人も

初めてですよ」


私も彼の第一印象を伝えると

その言葉に彼が急いで振り向いた


大倉「あれは

仕事終わりでヤスを待ってたからや」


「そうですか....」


こんな所でムキになるのが

子供だと思った

そして

確実に私よりも年上の彼に

可愛いと思い

拗ねた彼に

少しだけ笑ってしまった


大倉「!!!!!!!!!!!!!」


彼の驚きに私は彼を見つめた


「なんですか?」


大倉「今、笑ったやんな」


嬉しそうに言う


「笑っていませんけど....」


私は自分の笑顔をすぐに消した


大倉「いや、笑った!」


「笑っていません」


大倉「笑ったし」


言い合いが嫌になり黙って彼を睨んだ


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