第79章 紛失
私は、驚いて彼を見ていると
彼は子供のような顔をしながら笑い
大倉「出会った時に戻ったなぁって」
そう言いながら一人で笑っていたのだ
「出会った頃?」
私は驚きながら言うと
大倉「ずっと、つんつんしてたもんなぁ」
そう言うと静かに私を見つめたのだ
そう・・・
そんな私を彼は笑顔にしてくれた
こんな私を愛してくれた
私は、彼の目線から逃れるように
顔を下に向けた
大倉「あーーーつ、ほんまアカン」
突然、彼が頭をかきながら大声をだしながら
しゃがんだのだ
どうしていいか分からずに
私は彼を見つめていた
そんな私を
しゃがんだまま彼は見つめてきた
「大倉さん?」
私は動揺していた
そんな私を察してか
彼は少しだけ微笑むと
大倉「俺、アンタの為を思って
別れを決めたのに・・・」
「のに?」
私は彼の言葉を聞こうとしていた
そんな私に押されるように
彼は言葉を続けてくれた
大倉「どんな事をしても
アンタを忘れる事ができん・・・」
「・・・・・・」
大倉「今、偶然に会って
それが分かった・・・」
彼はそう言うと俯いてしまった
呆然と私は彼を見ていた
今、起きている現実に頭が追いつかなかったのだ
そんな私に彼は何を思ったのか
大倉「・・・そんな勝手な話が
許されるわけないよな・・・」
彼は辛そうに言うと
私に背を向け
大倉「そしたら、またな・・・」
私から去ろうと足を動かし始めたのだ
その時
私の身体は勝手に動き
彼を後ろから抱きしめたのだ
「私も、忘れられませんでした・・・」
そう言いながら
もう彼が離れないように
抱きしめている腕に力を入れていたのだ
私は、目の前に見えた幸せを逃がさないように
必死で彼を捕まえたのだった