• テキストサイズ

モノグラム

第71章 傷の躊躇






私は彼の声にホッとしていた




『はい、起きてました・・・』




大倉『ごめんな

今日は朝からの撮影でさぁ・・』




彼は申訳なさそうに伝えてきた





『私なら大丈夫ですよ・・・』





私は彼に嘘を付いた




大倉『今なぁ、マルが手が開いてて

そっちに向かってるから送ってもらって?』





『えっ?』





大倉『一人で帰すなんてさせんよ・・・』




彼は少しだけ笑った声で言ってきた




『そんなぁ、悪いですから

一人で帰りますから・・・』




私の心に彼の優しさが入ってくる




大倉『なぁ

俺がこのままにすると思ってたん?』




『えっ?』




私は驚いていた





大倉『大切な人を悲しく一人で帰さんよ

本当は俺が行きたいけど

仕事で無理やからマルに頼んだんや』





『・・・・・・』





大倉『だから

マルに連れて帰ってもらってな

ホンマにごめんな・・・・』






彼の言葉、気持ちが痛かった





『ありがとうございます・・・・』





私は目から溢れる涙を拭きながら

返事をしていた





大倉『うん、ほんなら仕事に戻るから』




『はい、頑張って下さいね』




私はそう言って彼からの電話を切った






切った後に

私は自分の肩を抱いて泣いていた

この傷が私の心を歪ませている

どんなに素直になろうとしても

この傷が私に一歩を進ます事を躊躇させるのだと




自分を恥ずかしく思っていたのだった







/ 189ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp