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モノグラム

第71章 傷の躊躇




 私が朝の光で目覚めると

彼のベッドの上に一人で寝ていたのだった



私は驚いて起き上がり

彼を探したが見当たらない


ベッドの下に脱ぎ捨てていた服を

慌てて着て

寝室から恐々と出た




彼の部屋には物音がない

不思議に思ってリビングに行くと

テーブルに手紙が置かれていた




私はその文字を口に出して読んでみた



「朝から仕事が入ってるから

起こさずに行くな・・・」




それだけ書かれていた


あんな素敵な夜を過ごしたのに




愛してるの言葉もなかった事が

昨日の夜が夢だったのでは

とさえ思わせる




私は紙をテーブルに

置きながらため息をついた



「・・・・夢を見過ぎたのかなぁ」




そう呟いて部屋を見渡した




本当に整理整頓されていて

彼らしいと感じていた・・・




突然

私の胸に寂しさの風が吹いた


彼の匂いや彼を感じるのに

彼が居ない空間に悲しくなった





自分の肩に痛みが走り

もしかして彼はこの傷でやっぱり・・・

私の顔すら見たくなくなったのか





あの文章は冷たすぎる



勝手に不安が私の胸を締め付けていく




違うと思う自分もいるが

私はこの傷で愛される事を

信じられない自分もいたのだ





こんな小さい事でも

不安になってしまうのだ





私は、身支度を整えて

彼の部屋を出ようとした時だった



私のスマホに着信が鳴り

手に取ると彼だったので






『・・・もしもし』




私は静かに電話に出た





大倉『おっ、起きてた?』





彼は明るい声で私に言ってきた



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