第44章 彼
私を座らすと
彼は私の横に静かに座った
安田「妬き過ぎやって」
安田さんは呆れながら笑っていると
彼は無言で安田さんを睨んだ
大倉「で、何しに来たん?」
彼は機嫌の悪そうな声で
安田さんに言った
すると安田さんは清まして
安田「お前の元気な素を
届けにきただけぇ」
大倉「・・・・・・」
安田さんの言葉に彼は私を見たが
照れ臭そうに頭をかいた
大倉「こんな
カッコ悪い時に連れて来るなよ」
すると安田さんは
勝手知っている部屋なのか
ソファーから立ち上がると
キッチンに進みながら言った
安田「やから連れて来たんや」
大倉「はぁ?」
彼は驚きながら
安田さんを見ると
自由な感じで
安田「何、飲む?」
彼を無視するように私に言ってきた
「何でもいいですよ」
私が申訳なさそうに言うと
安田「ほんなら、コーヒーでも入れるわ」
笑顔で言ってくれたので
私も笑顔で返事した
すると安田さんは彼に向かって
安田「ええ所ばっかりやったら
深くなれんやろ?
お前の悪い部分も見てもらって
進まなアカンのちゃうかなって
思ってね」
そう彼に告げると
キッチンに消えていった
部屋に残された私と彼は気まずかった
だから、黙っていた
安田さんから
二人とも大きな課題を出されていて
それを
考え込むように
大倉「・・・・ごめん、こんな奴で」
彼が聞こえるか
聞こえないぐらいの小さい声で
言ってきた
「・・・・・・」
私の中の可愛くない部分が邪魔をし
何も言わずに彼を見つめてしまう
それが彼を追い詰めると分かっても
大倉「呆れたやろ?
こんな奴でさ・・・・」
彼は辛そうに話を続けた
大倉「アイドルって言っても
結局は人間やのに
色んな意味で完璧を求められる・・・・」
彼の心の声を聞いて
私の中で何かが弾けた
「でも、それがお仕事なんですよね?」
私は彼に冷たく反論した
彼は驚いて私を見る