第3章 ちょっと冷静になってみよう*
自室へ戻ると、
重たい鞄を机に下ろし、
夜用の豆電球をつけた。
ベッドに座り込み、溜息をひとつ。
この時頭の中では、今日
あった出来事が鮮明に駆け巡っていた。
自分を
『クラスの管理人』と
言い張る不思議な男の子。
唯一彼の名前を知る
元不良、暁。
少し曖昧な性格だが、
何かと頼りになりそうな白石。
ツンデレな少女と、
鈍感な少年。
今日だけで、こんなにも
個性豊かなクラスメイトに出会えた。
―――今のことだけ考えれば、楽さ
初めに言われた言葉。
本当に、そうだった気がする。
今のことだけ考えて行動していたら
すぐに友達ができた。
「…良いクラスだな」
ぽつり、と口を零すと、
下から私を呼ぶ母の声がした。
「あいー!
ご飯食べよーっ!」
「あ、はーい!」
下に聞こえるよう返事をすると、
電気を消し、すぐに部屋を出た。
ダイニングに戻ると、
食卓には美味しそうな料理が
ずらりと並んでいた。
絶品であろう料理の味を
想像すると、つい涎が垂れそうになる。
危ない 危ない。
さて、食べようかな?
椅子に座ると、母が
飲み物を用意してくれた。
最近気に入ってるという
りんごの風味がする紅茶だ。
…香りがいい。
「お母さん、これ本当好きだね」
「ん?」とにこにこ顔で
顔を向けてくる母は、
また鼻歌を歌い始めた。
「これ、大好きなの。
お隣さんに挨拶するために
これを持っていったら、すごく
気に入られてねっ?
そのお隣さんと仲良くなっちゃった!」
「へぇ~、なんて苗字?」
「ええっと…川向(かわむかい)さん
だったかしら…?」
母は自信なさげに
首をコテっと傾けた。
仲良くなったお隣さんの名前くらい
覚えておきなさいよ…。
そう思いながら
私は「へぇ」と苦笑いをした。