第3章 ちょっと冷静になってみよう*
それから、とりあえず
大量の木の実たちをダンボールの中に
そっと詰め、子猫の頭を
もう一度ゆっくり撫でた。
気持ちよさそうに
尻尾をクネクネと曲げている。
「良かったね。」
そう言って立ち上がると、
手を振って空き地から離れた。
あんな小さな命でも
簡単に捨てられてしまうのだ。
―――だから 人間は嫌い
あの苦しそうな声が
耳に響いてきた。
確かに… そうなのかもしれないな。
溜息をつくと、
垂れ下がっていた鞄を
しっかりと背負い込んで
自宅へと、足を進めた。
*
「ただいま~」
洋式のまだ新しい扉を開けると、
覚えのある匂いが体を包んできた。
やはり、我が家は
1番落ち着くところだ。
この家は新築らしく、
白が基調とされた三階建ての家。
リビングはそれぞれ一階と
二階にあり、私の部屋は二階。
三階はまだ使ってはいないが、
その内父の書斎となることになっている。
玄関で靴を脱ぎ、
左側の扉を開ければダイニングに出る。
新しいアイボリー色の台所で、
母が夕飯を作っていた。
とても香ばしい匂い…
今日は生姜焼きかな?
「ただいま、お母さん。」
テーブルに近づくと、
母が私に気づき、にっこりと微笑む。
「あ!お帰りなさい!愛!」
「お父さんは、まだ仕事?」
「うん、でももうすぐ帰るって!」
「そっか!」
母はこの台所が気に入ったのか、
料理をお皿に盛り付けながら
鼻歌を歌っている。
…今日もご機嫌だなぁ
ダイニングから出て行く時、
母の鼻歌が 自分の好きな曲で
つい足を止めて聞き惚れてしまった。