第3章 ちょっと冷静になってみよう*
子猫の顔を、
優しく撫でる。
子猫はミャー、と
小さく鳴くと、私の撫でる
指に手を寄せてきた。
…とても可愛らしい。
「…か、える…の?」
「え?」
声を確認すると、先程まで
このダンボール箱の前に
佇んでいた人だった。
男性だ。
年は、割と若い。
というより私と同年代だろうか。
しゃがみこんで独り言を
言った自分がすごく恥ずかしい。
そんなことは置いておき、
その男性の言葉が気になった。
電灯の光が彼の周りに
反射して、うまく見えない。
「かえるって…
この子猫たちを
飼えるかってことですか?」
男性は何も言わない。だが、
頷いていることがわかった。
「それが…私、
動物は飼えないんです。
すごく可哀想だけど…
どうすることもできない…」
男性は黙り込む。
数秒経つと、口を開いた。
「…だ…から
にんげんは…嫌い…」
「…」
男性の言葉に、私は
なんだが胸が痛んだ。
「…ごめんなさい。
こんな、不甲斐ない人間で」
相手も人間だというのに
なんて馬鹿なことを言っているのだろう。
「…」
「で、でもっ
中には凄く優しい人がいるんです!
私の身近にも、います。」
「…そ、だね」
気づくと、男性が隣から
既に姿を消していた。
一体誰だったのだろう…
ミャー、 ミャー
「ん?」
子猫が、私の手から離れ
ダンボールから這い出、
先程の男性の足元に近づいた。
子猫を目で追っていた自分は
あっと驚く。
そこには、
子猫の食料だろうか。
木の実がドッサリと
積み上げられていた。