第3章 ちょっと冷静になってみよう*
「やっちゃった。」
白石が小声で呟いた。
管理人の鋭い目線が白石をさす。
「からかいはするな。
今のはいじめと見てもいいんだな?」
…いじめっ!?
その言葉に目を見開く。
確かにからかわれて嫌な思いを
したかもしれないが、
何も いじめだ、とは
言い過ぎではないだろうか。
「そんな! いじめだなんて
私は大丈夫ですよっ?」
「ダメだ。」
白石を庇おうとしたのに、
管理人の鋭い目が私に向けられていると
感じると、声を思わず飲み込んでしまった。
「いいよ、愛ちゃん。
ごめんよ管理人。」
白石は笑顔を絶やさずにいる。
管理人は白石を許してくれたのか
少し目つきが柔らかくなった。
「分かればいい。でも、
罰として廊下掃除、実行だぞ。」
「へーいへいっ」
白石は
音を鳴らしてベッドから
立ち上がると、大きく伸びをした。
「んーっ、流石に
身長無理あったかな、キツかったわ。」
「ごめんなさい、私のせいで…」
「ああ、全然気にしないで。
きっと俺の自業自得さ。」
吹っ切れた表情で、管理人に
近づき、再度許しをもらう。
そんな姿から目を離せずに、
気づけば皆が帰る準備を済ませていた。
管理人が振り向いて、
「帰るぞ、愛。」
と静かに言った。