第3章 ちょっと冷静になってみよう*
「本当ですよ、
私、白石さんから聞きました。
皆、管理人さんのことを
心の底から尊敬してるって」
あの白石の嬉しそうな口元が浮かぶ。
頬が紅潮したままの管理人は、
私の言葉に耳を傾けて、
少し遠慮がちに微笑んだ。
「そ、そんな風に思っていたのか。」
恥を隠そうと口調を平然に
保とうとしているが、無理だったらしい。
その恥じらいの笑顔が
とても微笑ましく見えた。
「ふふ、管理人さんでも
そんな顔するんですね。」
「僕はどんな印象を持たれているんだ…」
「んー…強いて言えば
『堅そうだけど、優しそう。』
でしょうか。」
「…あまりわからない。」
「まあそんなもんですよ。」
会話を終えた後には、
すっかり綺麗に手当てが終了していた。
私は立ち上がって管理人に
礼を言い、デスクに置いておいた
鞄を取ろうと動き出す。
その時。
「暁は、」
手が止まった。
「暁は、
…いい奴だ。
これからも…よろしく頼む。」
私は、管理人の背中を見つめる。
少しだけ見えた顔が
演技の匂いなどない
自然なはにかみを浮かべていた。
「 … はい!」
私は、力を込めて答えた。
その後ろで、
ガゴンッ
と、物音と何かが軋む音がした。
部屋の仕切りとなっている
カーテンの向こうだ。
確か、大きめのベッドスペース。
管理人も、何事だ?と
言うようにカーテンを見つめた。