第3章 ちょっと冷静になってみよう*
「ところで先生は…あれ?」
保健室内を充分に
見渡したが、先生らしき人物は
見当たらなかった。
「…いない。」
「勝手に大丈夫でしょうか…?」
「気にするな。
暁のせいにしておく。」
「それっていいんですか…」
暁もかわいそうに…。
私が呆れ顔でそう言うと、
管理人がふふっと笑った。
夕日の日差しが室内を
照らして、彼の顔も照らされる。
「いいよ。
あいつにはそれが丁度いい。」
楽しそうに頬を赤らめ、
息を弾ませて一人笑っている。
とても温かい笑みが
その顔一面に広がっていて、
見ているこっちも心が温まった。
なんて素敵な笑顔だろう。
「ふふふっ」
反射的に、私も
笑ってしまった。
「手当して早く帰る。」
「あれ、暁さんに
会いたくなったんですか?」
調子に乗って、
変なことを口走ってしまった。
管理人が目を丸くして
私を見つめる。
(まずいこと言ったかも…)
瞬時に脳内がその言葉に
反応すると、私は
焦って「冗談ですよ」と笑った。
管理人は顔を伏せる。
(や、やっぱまずい…?)
「…い。」
「…え?」
心臓がバクバクと鳴っている。
こんなに緊張してたなんて
気づかなかった。
機嫌を損ねてしまった。
だが、違っていたらしい。
「 愛は面白い。 」
管理人が、また笑った。
「…え?」
「気に入った。」
「…えっ!?」
別に恥ずかしがることではない…はず。
なのに何故だろう…?
すごく彼の笑顔に
胸も呼吸も弾んでいる。
こんな感情、初めてだ。
「さて、手当するぞ。」
「…は、はい。」
私は、ギュッと感情を抑えて
彼に出された椅子に腰をかけた。
ちょっと落ち着こうよ…私…っ