第3章 ちょっと冷静になってみよう*
保健室は東校舎側の一階。
そこまでの道のりは
私達の教室からは少し遠い。
向かう途中、別に
これといった会話もなく、
沈黙と距離を保ったまま、
廊下をそれぞれ歩いていた。
そして、ピタッと止まる彼の足。
「着いたぞ。」
「は、はいっ」
「…。」
管理人は、私の膝を見つめる。
…心配してくれているのかな。
先程のような痛みも静まったし、
ここは大丈夫と言っておこう。
「膝なら大丈夫ですよ。」
あくま自然な表情をつくる。
管理人は、本当に、と言うように
私の目を見た。
「…痛くないのか。」
「はい!」
一旦管理人の動きが止まる。
「でも 心配だから
保健室で手当をする。」
そして、ガラッと
管理人が保健室の扉を開けた。
管理人に手を引かれて
中へと誘導される。
その時に、驚いて
少し足がもつれたことは言わないでおこう。
室内は、思いのほか広かった。
随分と日当たりの良い空間で
流石という程独特の匂いが鼻につく。
ベッドも数があり、
二人寝れるような程大きかった。
「…設備が充分ですね。」
「僕は理事長に申し出たからな。」
突然の『理事長』という言葉に
私は彼を二度見する。
「え!?理事長!!?」
「ここは生徒が安心して
通える学び舎にしたい。
その為に、まず保健室を
改良したのだ。」
「り、理事長に頼むと
そういうことも可能なんですね…」
「まあ、僕も詳しくはわからない。」
相変わらず涼しい顔だ。
彼の横顔を見て、私は思う。