第1章 素敵なクラスとご対面*
だけど、こうやって
一人の女の子を背負いながら、
走るというのは、
流石男の子だと感じる。
大きく見えた彼の背中が、
なんだかとても心地よかった。
「ついたぞ。」
「…あっ、はい!」
彼のスっと
弓矢のように通り過ぎる声に、
私は顔をあげて返事をする。
改めて辺りを見ると、
ここは学園の裏門だと気づいた。
その時に彼がしゃがみこみ、
私は急いで背中から降りる。
制服のスカートを整え、
身だしなみをきちんとしたところで、
私は前を向いた。
少年は、疲れている様子は見えない。
ずっと持っていた黒いファイルを
静かに見つめた後、
その視線が私に変わった。
「何処か怪我していないか。」
「大丈夫ですっ」
「膝は?」
「だいじょうぶ…かな?」
膝にはまだ痛みが残っていた。
少年はじっと私を見ている。
そんなに見られても
どうしたらいいのかわからない…。
心配させているのは
申し訳ないので、私はにこっと微笑んだ。
少年の顔は変わらない。
沈黙が私には苦しかった。