第7章 ユウガタのウサギ
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ドゥンッ
いきなり銃声が響いた。
私の後ろに立っていた男が1人倒れる。
目の前の男はそれでもなお、銃を下ろさない。
『あっぶな〜!顔スレスレじゃん!』
「…春雨(おまえら)の判断で仲間を消されるのは許しがたいな。」
『そうかなぁ。あんた達だって、同じことしてたんだよ?』
疑問を浮かべる男に、にっこりと笑顔を見せたまま、すくっと立って、後ろの奴ら全員傘で撃つ。
ドサドサッと倒れる音を耳に、男は眉間にしわを寄せた。
『……私は、忘れちゃいない。5年前、私の両親が殺されたあの日から』
私は男の首元に傘を突きつける。
男も私のこめかみに銃を向けていた。
『私の目の前で2人の首を切り落としたアンタを!!忘れるわけがない!!』
「……なら、勝負と行こうか。春雨の幹部さんよ」
私は傘を上に向けて、電灯を全て撃ち割る。
その音と同時に出入り口の扉が大きな音を立てて開き、ドサドサと人が倒れる。
『知ってる?本当の暗殺者ってのは、暗闇でも相手を殺れるんだって』
「…ああ。よく見えるさ。敵(えもの)の行動(うごき)が」
『アッハッハ!楽しいねぇ…!』
傘を振り回す音、銃の発砲音、人が倒れる音、物を荒らしていく音……
暗闇で、何も見えない分、耳で感じる。
サクラが進んで行く道全ての光を消してゆく。
その後ろを追いかけるように奴がついてくる。
一階に降りてくると、数十人の部下達が私目掛けて力任せに攻め寄ってきた。
『そうこなくっちゃ♪』
「お前のその顔、提督の神威とやらと一緒だな!!」
『……ふふっ。夢中になると、快感を得られる。神威とは同じようで違うんだよ』
目の前に現れた男の頬を殴り、そのまま腹を膝で蹴り飛ばし、
後ろにいたやつの攻撃を番傘で受け止めると一回転しうなじ当たりに傘を振りかざした。
「クッソ…こいつ女のくせに…」
「どういうことだ…っ」
ニヤリと笑うと、連射する銃声の音が聞こえ、私の目の前にいた奴らが何故か一斉に倒れた。
「…ッチ。どうなってやがる」
仮設倉庫の出入り口扉から光が漏れ、そこに立っていたのは
「なんだ。心配して見に来たのに随分楽しそうじゃないか。俺も混ぜてよ」
いつもの表情の神威だった。